正しいプロセスで正確な技術を身につけよう! 日本サッカー協会が提唱するU-12年代のヘディング練習メニュー
2026/10/30

ゴール前での攻防の要となるヘディングは、サッカーという競技にとって欠かせないプレーです。しかし2019年、「元プロサッカー選手は一般人よりも認知症などのリスクが高い」という研究結果が発表されたことを受け、育成年代でのヘディングの扱い方を見直す動きが、世界各国で広がりました。
このような動きを受けて、日本サッカー協会(以下、JFA)は、医科学の専門家とサッカー指導者による特別プロジェクトを立ち上げました。関連する論文や研究を調べ、各年代のプレーを分析し、元日本代表選手へのヒアリングなどを実施した上で、2020年に「育成年代(幼少期〜U-15)でのヘディング習得のためのガイドライン」をまとめました。
ヘディングは予測、空間認知、体幹、跳躍などさまざまな身体能力が求められるプレーで、短期間で一気に身につくものではありません。子どもたちの成長段階に合わせ、頭への負担をできるだけ抑えながら、正しい技術を身につけていくためのトレーニングメニューを紹介します。
教えてくれるのは……
1965年生まれ、山形県出身。ジュビロ磐田、ヴィッセル神戸、FCソウル、U18、U20、U23日本代表などでフィジカルコーチを歴任し、2025年より現職。フィジカルコーチの育成・派遣、グラスルーツへのトレーニング指導、フィジカルデータの測定・分析などの旗振り役を担っている。
※モルテンはJFAのソーシャルバリューパートナー/コンペティションパートナーとして、サッカーをより安全に、より楽しくプレーするための環境整備に取り組んでいます。
重要なのは「禁止」でなく「正しく恐れる」こと
先に紹介した研究を受け、イングランドサッカー協会は2024年から、9歳以下のあらゆる試合でヘディングを禁止。さらに2026-27シーズンからは、この対象を11歳以下まで広げる予定です。
また、脳しんとうへの意識が高いアメリカでは、この研究が発表される以前から対策が取られていて、サッカー協会傘下のチーム・アカデミーの11歳から13歳までの選手は練習で行うヘディングの回数が制限されています。
そうした流れの中で、JFAが打ち出したのは「禁止」ではなく「正しく恐れる」という考え方でした。
ガイドライン策定プロジェクトの一員だった菅野さんは、決定までの経緯について次のように説明します。
「ヘディングに限った話ではありませんが、神経と筋肉のつながりが発達し、技術を身につけやすい年代(小学生中学年〜高学年ごろにあたるとされることが多い)を逃すと、習得までに時間がかかると言われています。とは言え、『ヘディングは脳への影響がまったくない』と言い切れるだけの医科学的根拠は現状ありませんので、ボールの重さや練習強度を各年代に応じて考慮し、接触や転倒が起こらないようなトレーニングを取り入れ、力強いヘディングができるようになる年齢になるまでに、ヘディングに関連した動作を正しく身につけるべきだ、という結論に至りました」
小学生年代は4人〜8人でゲームを行うのが主流で、試合中にヘディングが出る回数はそれほど多くありません。「小学生の全国大会で1試合にどれくらいヘディングがあるのかを調べた結果、ゴールキーパーのロングキックに対してディフェンダーが2〜3回する程度で、フォワードの選手同士がヘディングで競り合うようなプレーはほとんどありませんでした」と菅野さんは言います。
さらに脳震盪など頭部のケガに関する調査では、ヘディングそのものよりも相手との接触や着地の際の転倒によって起きるケガのほうが多いことも分かりました。そのため、こうしたケガを防ぐための体の使い方を身につけることの大切さも改めて確認されました。
~正しい競り合いとは?~正しいプロセスで正確な技術を身につけよう!日本サッカー協会が提唱するU-12年代のヘディング【前編】
~練習ポイント解説💡~正しいプロセスで正確な技術を身につけよう!日本サッカー協会が提唱するU-12年代のヘディング 【後編】
年代に応じたトレーニングメニュー
それでは、JFAが定める年代ごとのトレーニング指針とメニューを紹介します。まずは柔らかく軽いボールを使って「目をつぶらないでボールをとらえる」「ボールをしっかり額に当てる」ということに慣れさせた上で、徐々に実戦的なメニューに移行することを目指しましょう。
■ウォーミングアップ
低学年向け
高学年向け
■ヘディングフォーム
■トレーニングメニュー
低学年向け
高学年向け
未就学児(U-6年代)
風船や新聞紙を丸めたボール、軽量ボールを使って、額でボールを触る感覚・空中のボールを手で操作する能力を高めます。
トレーニングメニュー
- ・風船を自分で投げ上げて、落とさないようにキャッチする
- ・落ちてきた風船を体のいろんなところに当ててみる
- ・風船を手や足で連続してつく
- ・新聞紙を丸めたボールを上に投げてキャッチする
- ・軽量ボールを額の上に乗せてみたり、誰かと額同士ではさんでみる
菅野さんのワンポイントアドバイス
足元の技術を磨くことはもちろん大切ですが、手でボールを扱う能力も実はサッカーでは大事。友だちやお父さんお母さんとの日々の遊びの中などでもぜひ取り入れてみてください
推奨ボール、エクイップメントはこちら
低学年(小1〜2)(U-8年代)
「トレーニング」というよりも「遊び」の感覚で、高く浮いたボールに身体を合わせる・額でボールに触れるといったメニューを取り入れましょう。
トレーニングメニュー
- ・投げ上げた風船を額に当てる
- ・軽量ボールを自分で真上に投げ上げ、アンダーハンドや頭の上でキャッチする
- ・ボールネットに入れた軽量ゴムボールを額の位置にぶら下げ、自分でボールを揺らしてタイミングよく額に当てる(10回程度)
- ・誰かにボールを揺らしてもらい、額に当てる(10回程度)
菅野さんのワンポイントアドバイス
ボールを頭に当てることが怖くて、目をつぶってしまう子どももいると思います。まずはやわらかいボールを使って『怖くない』『痛くない』ということを知ってもらい、恐怖心を乗り越えられたと判断したら次のステップに進みましょう。ボールを投げ上げる高さは目線より少し上くらいからスタートしてください
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中学年(小3〜4)(U-10年代)
キャッチボールなどを通じて、空中のボールを手を使って処理する運動経験を十分に行いましょう。バレーボールなどの軽くて柔らかいボールを使用して正しいヘディング技術を習得し始めますが、4号球を使っての反復練習は行わないでください。相手の力を感じ取り自分の力を伝えるような相手と競り合う力を磨く運動にも取り組みましょう。
菅野さんのワンポイントアドバイス
頭でボールを迎えに行ってしまう選手には『強くぶつける必要はないよ。ギリギリまでボールを引き付けて、最後におでこに当てるようね』と指導してあげると良いでしょう
トレーニングメニュー
- ・テニスボールなどを使い、キャッチボール(フライボールも含む)を行う
- ・軽量ボールを投げ上げて額でキャッチする
- ・軽量ボールをバウンドさせて額に当てる
- ・軽量ボールをバウンドさせてヘディングする
菅野さんのワンポイントアドバイス
首の筋力や体幹がまだ未熟なので、ボールを遠くに飛ばそうとしたり、力強くヘディングさせる必要はありません。まずは正しい動作を身につけさせましょう
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高学年(小5〜6)(U-12年代)
ゲーム中に空中戦の状況が生まれる年代です。軽いボールを使って空中にあるボールを手で扱う、ジャンプの感覚を養うといった運動を引き続き取り入れつつ、4号球を使ってのヘディング練習も導入していきますが、「1週間で10回以下に留める」「投げたボールや蹴ったボールをヘディングするメニューはできるだけ少なくする」というように負荷や回数は最大限に考慮するようにしてください。
トレーニングメニュー
- ・ボールネットに入れた4号球を額の位置にぶら下げ、自分でボールを揺らしてタイミングよく額に当てる(10回程度)
- ・より高い場所にぶら下げ、ジャンプしてヘディングする(10回程度)
- ・ボールを額でキャッチする
- ・ボールをバウンドさせてヘディングする
菅野さんのワンポイントアドバイス
ヘディングにおいては空中での体勢が崩れない、相手としっかり競り合えるといった効果がある体幹トレーニングですが、『ボールを狙った方向にきちんと蹴る』というサッカーの基本技術向上のためにも欠かせません。この年代は週に2〜3回程度から取り組むと良いでしょう
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